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自作EAの検証のために、主要業者の口座タイプ別にドル円のティックを8日分取得し、スプレッドと手数料を合わせた実効コストを実測しました。公表スペックとは順位が入れ替わります。
この半年、私は自分で書いたEAを動かすために、業者選びをやり直していました。1回の取引で狙う値幅が小さいほど、コストが結果を決めてしまうからです。狙いが20pipsなら1pipsの差は5%ですが、狙いが3pipsなら1pipsの差は33%になります。スキャルピングでは、業者選びは戦略選びとほとんど同じ重さを持ちます。
そこで、手元にある10社以上のMT5端末から、ドル円のティックを8日分ずつ取得して、実際のコストを測りました。公表スペックを転記したのではなく、自分の口座に流れてきた気配値を数えたものです。
結果を先に言うと、順位は公表スペックとかなり違いました。そして意外だったのは、優秀だった3社がExness・BigBoss・ThreeTraderだったことです。名前の並びとしては、あまり見かけない組み合わせだと思います。
結論:ドル円の実効コスト実測ランキング
実効コスト=スプレッド+往復手数料をpipsに直したものです。取引のたびに必ず払う金額なので、これが本当の入場料になります。
| 業者・口座タイプ | スプレッド中央値 | 往復手数料 | 実効コスト | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| BigBoss OMEGA | 0.20 | なし | 0.20〜0.30 | 最安。ただしIB経由でしか開けず残高条件あり・ボーナス対象外 |
| ThreeTrader Pureスプレッド | 0.65(日別0.6〜0.7) | なし | 0.65〜0.70 | 誰でも開ける口座の中では最安。準固定でp99も1.3 |
| Exness プロ | 0.70(全日ぴったり0.7) | なし | 0.70 | 疑似固定で読みやすい。ただしp99は2.7と裾が太い |
| ThreeTrader RAWゼロ | 0.15 | $4=0.63pips | 0.73〜0.83 | 同じ業者のPureに負ける |
| Exness スタンダード | 1.00 | なし | 1.00 | — |
| Exness Rawスプレッド | 0.00(98.5%が0.3以下) | $7=1.10pips | 1.10 | スタンダードより高い |
| XM KIWAMI極 | 1.10〜1.30 | なし | 1.10〜1.30 | 公表0.7に対して実測は大きい。スワップフリーは唯一無二 |
| XM Zero | 0.10 | $10=1.57pips | 1.67 | KIWAMI極(1.10〜1.30)より明確に高い。手数料は公式で片道$5 |
| AXIORY(テラ相当) | 0.30(全時間帯フラット) | ¥950/ロット=0.95pips | 1.25 | 手数料はエントリー時に往復分を一括徴収(約定履歴で確認) |
| BigBoss プロスプレッド | 0.20 | $9=1.41pips | 1.61 | 同じ業者のスタンダード(1.30)より高い |
| Exness Zero | 0.00 | ドル円は非公開 | 不明 | 公式は「1ロット片道0.05ドルから」というレンジのみ公表 |
【2026年8月14日 訂正】公開当初、XM Zero口座の取引手数料を往復7ドルとして実効コスト1.20pipsと記載していましたが、XMの公式条件は1ロットあたり片道5ドル(往復10ドル)でした。正しくは1.57pips相当で、実効コストは1.67pipsになります。あわせてBigBossプロスプレッドの手数料換算を1ドル160円基準から157円基準に統一しました(1.44→1.41)。お詫びして訂正します。
※2026年8月14日、各口座のMT5端末から取得した8日分のティックの中央値。ロールオーバー時間帯(サーバー0〜1時台)は除外。手数料のpips換算は1ドル157円で計算。スプレッドは業者が改定するため、この数字にも賞味期限があります(後述)。
誤解その1:「スプレッド0.0pips」は最安ではない
表を見て最初に気づくのは、スプレッド0.0を掲げている口座が、軒並み下のほうにいることです。
- Exness Rawスプレッド 0.00 + 手数料1.10 = 1.10(同社スタンダード1.00より高い)
- XM Zero 0.10 + 手数料1.57 = 1.67(同社KIWAMI極 1.10〜1.30より高い)
- BigBoss プロスプレッド 0.20 + 手数料1.41 = 1.61(同社スタンダード1.30より高い)
- ThreeTrader RAWゼロ 0.15 + 手数料0.63 = 0.78(同社Pureの0.65より高い)
4社すべてで、同じ業者の中で「名前がいちばん安そうな口座」が実は高いという同じ逆転が起きています。偶然ではなく、これはドル円という銘柄の性質から来ています。
手数料をpipsに直す式が、多くの比較サイトで間違っている
ここが本題です。往復手数料をpipsに直す計算は、こうなります。
往復手数料(pips)= 往復ドル建て手数料 × ドル円レート ÷ 1,000
1ドル157円のとき:往復$4=0.63pips / 往復$7=1.10pips / 往復$9=1.41pips / 往復$10=1.57pips
なぜレートが入るのか。ドル円1ロット(10万通貨)の1pipsは1,000円です。これをドルに直すと、157円のときは 1,000 ÷ 157 ≒ 6.4ドル。つまりドル円の1pipsは約6.4ドルしかありません。
ところが「1pips=10ドル」という数字が広く出回っています。これはユーロドルやポンドドルのような、ドルが右側にある通貨ペアの話です。この10ドルをドル円に持ち込むと、往復7ドルの手数料は「0.7pips」に見えます。実際は1.10pipsです。
この取り違えで、手数料はおよそ1.57倍も軽く見積もられます。「スプレッド0.0+手数料の口座が最安」という結論の多くは、ここから生まれています。しかも円安が進むほどこのズレは大きくなります。1ドル100円なら往復$7は0.70pipsで済んだものが、157円では1.10pipsになる。手数料がドル建ての口座は、円安になるほど不利になっていくのです。
ThreeTraderで、手数料のないPure口座が手数料ありのRAWゼロ口座を逆転しているのは、まさにこれが理由です。
誤解その2:「平均スプレッド」は1日の中の別世界を隠している
もうひとつ、比較サイトの「平均スプレッド◯pips」という数字が隠しているものがあります。1日の中で、スプレッドは何倍にも変わります。
実測した各社の、ロールオーバー時間帯(サーバー0時台=日本時間のおおよそ朝6〜7時)の値がこれです。
| 口座 | ふだんのスプレッド | ロールオーバー帯 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| XM KIWAMI極 | 0.8 | 2.8 | 3.5倍 |
| AXIORY | 0.30 | 5.1 | 17倍 |
| BigBoss OMEGA | 0.20 | 5.60 | 28倍 |
スプレッドが最も狭い口座ほど、この時間帯の跳ね上がり方が激しいのが分かります。ふだん0.20の口座で朝6時台に往復すると、11pips分のコストを払うことになります。5pips狙いのスキャルピングなら、この1回で2回分の利益が消えます。
対策は単純で、この時間帯を避けることです。裁量なら朝の成行を打たない。EAならこの時間帯を停止させるか、「スプレッドが◯以上なら発注しない」というフィルタを入れるほうが確実です(時間帯は日本時間で言うと夏と冬でずれますが、スプレッドの値そのものは常に正しい)。
おまけ:MT5の「スプレッド」欄をそのまま信じてはいけない
これは自分でデータを取る人向けの話ですが、重要なので書いておきます。
MT5のローソク足データには「スプレッド」という項目があり、これを集計すると簡単にスプレッド分布が出せます。ところがこの値は、実際のスプレッドを系統的に低く見せます。同じ銘柄・同じ期間で比べると、こうなりました。
- ふだんの時間帯:足の値 0.20 / ティックの値(実際の売値と買値の差) 0.30
- ロールオーバー帯:足の値 0.80 / ティックの値 5.90
桁が違います。決定的なのは、足の値が0.00を返す時間帯が存在することです。売値と買値が完全に一致する瞬間が1分間続くことはありませんから、この時点でこの数字は壊れています。
コストとして使うなら、必ずティック(気配値そのもの)から売値と買値の差を取ってください。足の値は「月をまたいで急に変わったか」という構造変化の検出には使えますが、金額の見積もりには使えません。
誤解その3:スプレッドは相場ではなく、業者が動かしている
実測して最も驚いたのがこれでした。スプレッドは相場の変動で広がったり狭まったりするものだと思っていましたが、それとは別に、業者が価格設定そのものを改定します。しかも予告なしに。
月ごとの中央値を並べると、はっきり段差が出ます。
| 口座 | 起きたこと |
|---|---|
| BigBoss OMEGA | 2026年5月まではスタンダードと同じ1.2〜1.3。6月に0.40、7月以降0.20へ。さらに8月12日夜から約22時間だけ1.10に戻り、また0.20に下がった |
| FXGT PRO | 2024年9月〜2026年1月は0.80で安定 → 2026年2月に1.50、3月以降1.30で定着。多くの比較サイトは今も0.5〜0.8と記載 |
| XM KIWAMI極 | 1.10 → 1.20 → 1.30 と、この数日でじわじわ広がっている |
| Exness 日経225 | 2025年9月に約4分の1へ(大幅な改善方向の改定) |
| XM・FXGT ECN・BigBossスタンダード | 2年間ほぼ動かず安定 |
OMEGA口座の「22時間だけ5倍になって戻った」は、私自身が実測して面食らったものです。1日単位で価格設定を切り替えられるということですから、1回のスナップショットで測った数字にはほとんど意味がないことになります。
ここから出てくる実務的な結論は3つです。
- 「平均スプレッド◯pips」は、いつ測ったかを書いていなければ読めない。2年間の平均値は、改定をまたいでいれば現在のどの状態も表していません。
- 長期の履歴は「変化を見つける」ために使い、代表値は直近だけで計算する。私はこれを逆にやって、一度結論をひっくり返しています。
- コストに依存する戦略を組むなら、口座は2〜3社持っておく。改定は予告なく来るので、来たときに移れる状態にしておくしかありません。
それで、スキャルピングにはどこがよかったのか
冒頭に書いたとおり、Exness・BigBoss・ThreeTraderの3社でした。理由はそれぞれ違います。
ThreeTrader Pureスプレッド ― 誰でも開ける中では最安
実効0.65〜0.70で、しかも手数料がゼロ。日別のブレも0.6〜0.7と小さく、上位1%の値でも1.3にしか広がりません。「読めるコスト」という意味では今回いちばん優秀でした。
注意点は建玉の上限です。1建玉あたり8ロット、1口座あたり80ロットという制限があり(交渉可という案内はあります)、資金が大きくなると注文を分割する必要が出ます。またスワップフリーの設定はありません。
Exness プロ ― 数字が動かないので設計しやすい
8日間すべての日で中央値がぴったり0.70。ほぼ固定と言っていい安定度で、手数料もありません。ストップレベルが0なので、利確・損切りを現在値のすぐ近くに置けるのもスキャルピング向きです。
ただし上位1%は2.7まで開くので、裾は太い。それと、公式には「即時約定方式」と書かれていますが、私が端末から実測した限りでは4口座とも成行でした。約定の充填方式もFOK(全量約定か不成立か)に固定されているため、EAを書く場合は注文の指定を合わせる必要があります。仕様は公式ドキュメントよりも端末の実測を信じたほうがいい、という例です。
BigBoss OMEGA ― 最安だが、誰でも開ける口座ではない
実効0.20〜0.30で、これが今回の最安でした。次点のExnessプロ(0.70)に3倍以上の差をつけています。手数料なし、スワップフリー、ストップアウトは0%。
ただし条件は厳しい。IB(パートナー)経由の専用フォームからしか開設できず、1人1口座、ボーナスもポイントも対象外で、口座を有効化するのに一定額以上の残高が必要です。「最も安い口座は、公式サイトの口座一覧から素直には開けない」という、なかなか示唆的な構造になっています。
そして先ほど書いたとおり、この0.20は改定で動きます。実際に22時間だけ1.10に戻った瞬間を私は観測しています。ここに全部を賭ける設計にはしないほうがいい、というのが実測から得た感触です。
ただし、これは「スキャルピングなら」の話です
ここまでの順位は、1回の取引を数分から数時間で閉じる前提のものです。保有期間が延びると、話がまるごと変わります。
スプレッドは1回だけ払うコストです。一方スワップ(金利の受け払い)は毎日発生します。だから保有期間が延びるほどスワップの重みが増していき、どこかでスプレッドの差を追い越します。
私はこれを金(ゴールド)で実測しました。ある業者のスプレッドは別の業者の3分の1でしたが、16日間持ったときの合計コストは、スプレッドが3倍広いほうの業者が半分で済みました。スワップの差がスプレッドの差を完全に飲み込んだからです。
ですから、この記事のランキングをそのまま「おすすめ業者ランキング」として読まないでください。スプレッドが効くのは短く持つ人だけです。数日から数週間持つスタイルなら、比べるべきはスプレッドではなくスワップの水準になります。
スキャルピング口座を選ぶときの確認項目
実際にEAを動かしてみて、スプレッド以外にも結果を左右する項目があることが分かりました。口座を決める前に、この6つを確認しておくと後戻りが減ります。
- ストップレベル ― 現在値からどれだけ離さないと利確・損切りを置けないか。0でなければ、狭い利確幅の戦略はそもそも成立しません。
- 約定の充填方式 ― FOK(全量か不成立)かIOC(部分約定可)か。EAの注文指定が合っていないと、エラーだけ出て1本も約定しません。
- 1建玉あたりの最大ロット ― 資金が増えたときに天井にぶつかります。ThreeTrader Pureは8ロットでした。
- ロールオーバー帯の値 ― 上で見たとおり、ここだけ別世界です。
- スワップの有無と符号 ― 泊まりが発生する設計なら必ず確認。スワップフリーでない口座で売り持ちを続けると、思ったより効きます。
- その口座がボーナス対象か ― 低コストの上級者向け口座は、たいていボーナス対象外です。コストを取るかボーナスを取るかは、口座タイプの選択の時点で決まってしまいます。
まとめ
- ドル円の実効コストは、BigBoss OMEGA 0.20〜0.30/ThreeTrader Pure 0.65〜0.70/Exness プロ 0.70の順だった(2026年8月実測)。
- 「スプレッド0.0」の口座は、手数料を入れると4社すべてで同じ業者の別口座に負けた(XM Zeroは実効1.67でKIWAMI極1.10〜1.30より高い)。
- ドル円の1pipsは約6.4ドル(157円のとき)。1pips=10ドルで換算すると、手数料は1.57倍も軽く見える。
- ロールオーバー帯(日本時間の朝6〜7時台)はスプレッドが最大28倍になる。狭い口座ほど跳ね方が激しい。
- スプレッドは業者が予告なく改定する。22時間だけ5倍にして戻した口座を実際に観測した。
- この順位は短期売買限定。長く持つならスワップのほうが効き、順位は入れ替わる。
スペック表を眺めているだけでは、この順位には絶対にたどり着けませんでした。自分の口座に流れてくる数字を数えてみて初めて、名前と中身が違うことが分かる。海外FXの口座選びは、まだそういう段階にあると思います。
実効コストが最も安かったのはThreeTrader
Pureスプレッド口座はドル円の実効コスト0.65〜0.70pipsで、しかも取引手数料がゼロ。日別のブレも小さく、上位1%でも1.3pipsに収まりました。「0.0pips+手数料」型の口座が軒並み1.1pipsを超えた中で、手数料のない口座が勝つという結果です。短い値幅を何度も取りにいくスタイルなら、まずここを基準に置いて他社と比べるのが分かりやすいはずです。
