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FXの人気書籍の手法を、本の解説と一緒に実データでバックテストするシリーズです。第2回は、YouTube累計170万回再生の「実践ダウ理論」を書籍化した『一生使えるFXチャート分析 見える化ダウ理論』。借金1,500万円からの復活という著者のストーリーと、勝率86%と書かれた型の中身を、4年分のデータで確かめます。
どんな本か ― ナンピンで強制ロスカット、借金1,500万円からの再起
著者のtakeruさんの経歴は、FX書籍の中でも際立って波乱に富んでいます。2018年、証拠金100万円のドル円売りポジションをナンピン(値が逆行するたびに買い増し・売り増しすること)で500万円まで膨らませ、強制ロスカット。借金は総額1,500万円に達しました。そこから自己破産を選ばず、1日15時間・週6.5日働きながら2年半で完済。その後にYouTube「FX見える化ラボ」を立ち上げ、シリーズ累計170万回以上再生され、オンラインコミュニティではのべ3,000人以上を指導したとしています。
本書で提示される実績は、2022年1月〜2024年12月の36ヶ月・247トレードの実データで勝率86%・合計+11,324pips。1回あたり平均+46pipsです。ナンピンで退場しかけた人が、ルール化で立て直したという構図がこの本の芯になっています。
本で紹介されている手法 ― ダウ理論の「見える化」
ダウ理論は「高値と安値の切り上げ・切り下げでトレンドを判断する」という100年以上前からある考え方ですが、概念的で、実際のチャートのどこを見ればいいか迷いやすい理論でもあります。本書の貢献は、これを数値基準つきの作業手順に翻訳したことです。
| 時間足の役割分担 | 環境足=4時間足(トレンド判定)/トレード足=1時間足(エントリー)/エントリー足=15分足(精度と決済) |
|---|---|
| トレンドの3条件 | ①明確な高値・安値を超えている ②戻しすぎていない(38.2〜61.8%が目安)③時間が経過しても水準を維持(4時間足6本≒24時間が目安) |
| 直撃エリア | ブレイクした高値・安値に価格が戻ってきた「帯」。1本の線でなくヒゲと実体を含むエリアで捉える |
| エントリー | 1時間足で「ふた山」(ダブルボトムなど)を作り、間の高値(ネックライン)をブレイクしたら入る。著者統計では247回中223回=90.3%がふた山以上を消化してから動いたとする |
| 決済 | 15分足の「ダウ崩れ」(直近の明確な安値・高値を終値で割る)で機械的に決済。利確も損切りも同じルール |
| 資金管理 | 1回の損失は資金の2%以内 |

面白いのは決済の扱いです。著者は自分の247トレードについて「裁量で決済した場合の合計11,832pips」と「15分足ダウ崩れで機械的に決済した場合の11,324pips」を比べ、ほぼ差がなかったという検証を自分で載せています。出口は機械でいい、と著者自身が言っているわけです。この姿勢は後で効いてきます。
バックテストしてみた ― まず「測定器の検算」から
今回の検証にはひと手間かけています。本に載っている著者の実例チャート9場面を正解データとして、私の実装が同じ場面で同じようにエントリーを発火させるまで測定器を修正しました。初版の実装は9場面中1つしか発火せず、原因を2つ潰して9場面すべてで発火する状態にしてから、4年分のデータ(15分足・1時間足・4時間足)に流しています。手法の検証は、測定器が本物と同じ場所で撃てることを確かめてからでないと意味がないからです。

| 検証項目 | 回数 | 勝率 | 平均pips |
|---|---|---|---|
| 基本ルールどおり(4年) | 108回 | 45.4% | +2.0 |
| 条件を緩めて著者と同じ頻度(87回/年) | 353回 | 44.8% | +4.0 |
| ランダムに入って同じ決済(比較用) | 3,288回 | 47.8% | +5.2 |
| 著者の書籍記載の統計 | 247回 | 86% | +45.8 |
注目してほしい数字が2つあります。ひとつは、機械化した型の勝率がランダムエントリーとほぼ同じだったこと。もうひとつは、それでも平均pipsはどの行もプラスだということです。勝ちトレードの平均は+31pips、負けは−18pips。この非対称は「15分足ダウ崩れ」というトレール型の決済が作っています。つまり本書の決済ルールは、機械に移しても働く本物の道具でした。
一方、著者の実例9場面と同じ場所で私の機械が建てた玉の成績は勝率46〜47%。同じ窓で著者は9勝2敗です。場所は再現できても、成績は再現できない。差は「書かれたルール」の外側、つまりどの場面を見送るかという著者の選別に宿っていることが、ここまで具体的に数字になるのは面白い結果でした。
この本の本当の読みどころ
勝率86%をそのまま持ち帰れる本ではありません。しかし、この本には機械でも確認できた価値が2つあります。
- 「ダウ崩れ」決済: 勝ちを+31、負けを−18に非対称化するトレール構造は実測で機能しました。損小利大を「気合」でなく「手順」にした、きわめて実用的な型です
- 「ダウカウント」という練習法: 4時間足の明確な高値・安値を毎日手でなぞる訓練。インジケーターを全部消して値動きだけを見る目は、この作業でしか育ちません
そして著者自身、「ダウ理論の法則は7割ほど当てはまる」「トレードで稼げるまで最速でも2年」と本の中で明言しています。勝率86%の裏に、こうした地に足のついた但し書きが並んでいるのがこの本の信頼できるところです。1,500万円の借金から立て直した人が言う「ルールを守る」の重みは、数字の検証とは別の説得力があります。私の検証は「ルールの部分は土台、選別の目は自分で育てるもの」という本書の構造を確認した、と読むのが正確だと思います。
自己資金ゼロで始められます
本書の練習法は、口座があれば今日から始められます。XMTradingの口座開設ボーナス13,000円は入金不要で、最小ロットなら「ふた山→ネックライン→ダウ崩れ」の一連の流れを実弾で数十回練習できる金額です。チャートを眺めるだけの学習と、建玉を持って見るチャートは別物です。
参考文献
- takeru『一生使えるFXチャート分析 見える化ダウ理論』(技術評論社、2026年)
