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FXの人気書籍の手法を、本の解説と一緒に実データでバックテストするシリーズです。最終回は、初版から増刷22刷を重ねるロングセラー、田向宏行『ずっと使えるFXチャート分析の基本』。インジケーターを1本も使わず、ローソク足の高値と安値だけで相場を読むこの本の型を、6年分のデータで確かめました。
どんな本か ― 22刷まで増刷され続けている「基本」の本
著者の田向宏行さんは1989年から投資を始め、FXは2007年から。本書は2018年の初版から増刷を重ね、電子版の底本は22刷に達しています。FX書籍は毎年大量に出版されては消えていく世界なので、8年間読まれ続けているという事実そのものが、この本の内容の説明になっています。
本書の立場は徹底しています。信頼できる事実はローソク足の四本値(始値・高値・安値・終値)だけ。その中でも見るのは高値と安値の更新だけ。移動平均線もRSIも「値動きから作られた派生物」であり、表示するとしても補助にすぎない。フォーメーション分析や酒田五法を「形の丸暗記では機能しない」と批判し、「最強の指標(聖杯)探しは時間の無駄」と言い切ります。あれもこれもと表示を増やしがちな初心者への、強い処方箋です。
本で紹介されている型 ― 2本のローソク足から始まる
本書の分析は、隣り合う2本のローソク足の関係を4パターンに分類するところから始まります。

- A: 高値更新・安値切り上げ → 買い手優勢、上昇の第一歩
- B: 高値も安値も更新 → 方向感なし、次の足を待つ
- C: 高値切り下げ・安値更新 → 売り手優勢、下落の第一歩
- D: 高値も安値も更新せず(前の足の中に収まる)→ レンジ継続
この見方を積み重ねると、相場は「レンジ」と「ブレイク」の繰り返しとして読めるようになります。トレンドとは「レンジブレイクが同じ方向に続いたもの」。そして売買はこう組み立てます。

- エントリー: レンジ上限のわずか上に買いの逆指値、下限のわずか下に売りの逆指値。ブレイクという「事実」が起きた側だけが約定する
- 損切り: エントリー根拠となったレンジの反対側。事前に必ず置く
- トレンドが続く限り: 新しいレンジが確定するたびに、損切りをそのレンジの反対側へ切り上げていく。ダウ理論の「明確な終了シグナルが出るまでトレンドは続く」に従い、含み益が出てもすぐには利確しない
ダウ理論の6法則のうちFXで使うのは2つだけ(値動きはすべてを織り込む/トレンドは終了シグナルまで続く)と割り切っているのも、この本の実用主義らしいところです。
バックテストしてみた ― 「終了シグナルまで降りない」の実力
本書の型(レンジブレイクを逆指値で取り、損切りをレンジ反対側に置いて追随させ、逆方向のブレイクで転換する)を、日足で6通貨ペア・6年分にわたり機械的に売買し続ける検証をしました。高値・安値の「明確さ」の判定を3通りに振っています。結果は二つの顔を持っていました。
- 6ペアの年間損益の中央値は、判定の緩さによって−279pips〜+14pips。勝率は22〜45%で、ほとんどの年・ほとんどのペアでは小さな損切りが積み重なります
- ところがドル円の2022〜24年だけは年間+182〜+865pipsの大きなプラス。歴史的な円安トレンドを、この型は「終了シグナルが出るまで降りない」ことで最後まで持ち切っていました
これは型の欠陥ではなく、型の性格です。レンジブレイク追随は勝率の低さを、当たり年の大きな利益で取り返す設計で、勝率22〜45%でも年間プラスになる年が現れるのは「損切りは浅く、利益は伸ばす」が機械的に実装されているからです。逆に言えば、トレンドの出ない年にコツコツ削られる期間を耐えられるかがすべてで、本書が繰り返す「小さく始める」「相場を休むのは個人投資家の特権」という言葉は、この削られる期間のための装備です。
ちなみに著者は本の中で「テクニカル本は上手くいった事例しか載せない傾向がある」と自ら認め、わざわざ失敗する実例(ポンド円)を載せています。予測を売らない書き手であることは、前回の『相場の壁とレンジで稼ぐFX』の検証で確認した「値動きが強ければ壁を突破し、弱ければ超えられない。それだけです」という一文とも一貫しています。
この本の価値は「目の訓練」にある
検証を終えて改めて思うのは、この本は売買ルール集ではなく視力矯正の本だということです。インジケーターを全部消して、高値と安値の更新だけを毎日追う。A〜Dの4パターンで次の足を待つ。それだけで、ニュースや他人の予想に振り回されずにチャートの前に座れるようになります。派生指標を足すのは、その目ができてからでいい。
初心者への具体的な使い方はこうです。
- 好きな通貨ペアの日足で、直近のレンジ(高値と安値)に水平線を2本引く
- どちらに抜けたら何をするか(逆指値の位置と損切りの位置)を先に書き出す
- 抜けるまで何もしない。抜けたら事実に従う
この「先に決めて、事実に従う」という筋肉は、どんな手法に進んでも土台になります。22刷という数字は、この土台の需要が8年間絶えていないことの証明です。
自己資金ゼロで始められます
本書の型は、レンジに線を引いて逆指値を置く練習がそのまま上達になります。XMTradingの口座開設ボーナス13,000円は入金不要。最小ロットで「ブレイクの事実に従う」を数十回体験すれば、この本の言っていることが体で分かります。
参考文献
- 田向宏行『ずっと使えるFXチャート分析の基本』(自由国民社、2018年)
