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FXの人気書籍の手法を、本の解説と一緒に実データでバックテストするシリーズです。第4回は、ロングセラー『相場の壁とレンジで稼ぐFX〔改訂版〕』。「壁」で相場を読む定番の枠組みを6年分のデータにかけたところ、著者自身が本の中に書いていた、ある一文の正しさが浮かび上がってきました。
どんな本か ― 読者から「年億」を出した応用編
著者の田向宏行さんは1989年から投資を始め、事業の売却を経てFXは2007年から。ブログ「虹色FX」やメルマガでの分析発信を長く続け、テレビ東京の経済番組にも出演してきた、日本のFX書籍界では定番の書き手です。本書は著者のFX技術書3冊目にあたる「応用編」で、基礎編『ずっと使えるFXチャート分析の基本』(シリーズ第5回で検証)の続きにあたります。
この本には有名な逸話があります。読者の一人が2022年に「年億」(年間収益1億円超え)を達成し、雑誌の対談で「シリーズの中で本書がもっとも有益。ボロボロになるまで読み込んだ」と語ったという話です。壁とレンジという枠組みが、実際に大きく勝った読者を生んでいる――その枠組みの中身を見ていきます。
本で紹介されている手法 ― 「壁」と4つのタイミング
本書の中心概念である「壁」とは、売り手と買い手の均衡点、具体的には次のような価格です。
- 同じ時間軸の直近高値・安値、前日の高値・安値
- 週足・月足など、より長い時間軸の過去の高値・安値
- キリのよい数字(150.000のような下3桁ゼロ)、パリティ(1.0000)
そして「長い時間軸の壁ほど厚い」(1時間足の均衡には5分足の12倍の売買量が要る、という説明)、厚い壁を抜けたときほど大きく動く、というのが本書の相場観です。取引タイミングは、レンジの上限Aと下限Bに対して4つに整理されます。

- ① Aの上抜けで買い(順張り)/④ Bの下抜けで売り(順張り)――逆指値で入る
- ② Aの手前で売り/③ Bの手前で買い(逆張り)
- 損切りは必ずエントリー根拠のレンジの反対側に置く
エントリーが逆指値なのには理由があります。指値で「安く買おう」とするとレンジ内のどこで約定するか分からないのに対し、逆指値は「壁を抜けた」という値動きの事実が起きたときだけ約定するからです。さらに資金管理も具体的で、損切り位置は壁(相場の構造)から決め、そこからロットを逆算する。損切り幅が狭ければ枚数を増やせ、広ければ減らす。どちらでも資金に対する損失率は同じになる――「損切りを先に、ロットは後で」という、当サイトの検証でも何度も重要性を確認してきた順序が明快に書かれています。
バックテストしてみた ― 壁は本当に「効く」のか
検証の設計はこうです。40pips以上の勢いで壁に接近した場面を6年分から集め、「30pips反発したか、10pips貫通したか」で壁の反発力を測る。比較対象として、壁でも何でもない価格(前日高値から20〜80pipsずらしただけの水準)でも同じ集計をします。壁に意味があるなら、壁の反発率は無意味な水準より高くなるはずです。

| 水準 | 反発率(実測) |
|---|---|
| 前日の高値・安値 | 39〜42% |
| 前週の高値・安値 | 37〜41% |
| 前月の高値・安値 | 35〜42% |
| キリ番(.00) | 44〜48% |
| 比較用: ずらしただけの無意味な水準 | 44〜46% |
結果は明快でした。壁の反発率は、無意味な水準と同じ帯に収まります。「長い時間軸ほど厚い」という勾配も出ませんでした(むしろ前月の高値・安値の方がわずかに低い)。壁を抜けた後に伸びやすいか(ブレイク追随)も測りましたが、これも対照と同じ。壁という価格そのものに、未来を曲げる力は測定できなかったのです。日足のレンジブレイクを機械的に売買し続ける検証もしましたが、6ペアの年間損益の中央値はマイナス、ただしドル円だけは2022〜24年の円安トレンドで大きなプラスという、トレンドの器としての性格がはっきり出ました。
ところが ― 著者は最初からそう書いていた
この結果を突きつけて本を批判する記事にするつもりでしたが、本文を読み込んでいて、ある一節で手が止まりました。壁の近くで相場が止まる理由について、著者はこう書いています。
値動きが強ければ壁を突破しますし、弱ければ超えられません。それだけです。
壁は未来を予測する装置ではなく、売り手と買い手の力を測る「場所」にすぎない――著者自身が明言しているのです。私の検証結果は、本の主張を否定したのではなく、著者のこの但し書きをそのまま数字にしたものでした。壁で反発するかどうかは事前には分からない。分からないからこそ、壁の外側に逆指値を置いて「抜けたという事実」に従い、損切りをレンジの反対側に置く。本書の設計は最初から「予測しない」ことを前提に組まれています。
だとすると、この本の実用価値は壁の的中率ではなく、次の4つの文法にあります。いずれも当サイトの検証と矛盾しない、むしろ強く支持されるものです。
- エントリーと損切りはセット: 注文を置く前に、どこで間違いを認めるかが決まっている
- 損切りは相場の構造(レンジの反対側)から決め、ロットをそこから逆算する: 資金の何%という比率はロット側で調整する
- レンジが切り上がるたびに損切りを追随させる: 利を伸ばしながら、守りの線を上げていく
- 転換点を2回跨いだら撤退: 自分の見ている時間軸が相場と合っていないサイン
初心者はこの本をこう読むのがおすすめ
「壁で反発を当てる本」として読むと期待とずれます。「どこにいれば間違いにすぐ気づけるかを教える本」として読むと、6年分のデータと喧嘩しない、長く使える道具箱になります。壁は狙いを定める場所、逆指値は事実に従う手段、損切りは撤退の予約。この3点セットは、手法が何であれFXを続ける限り使い続けるものです。応用編なので、チャートの基礎から入りたい人は第5回で検証する基礎編『ずっと使えるFXチャート分析の基本』から読むのが順序としておすすめです。
自己資金ゼロで始められます
本書の型は、注文の置き方の練習がそのまま上達になります。XMTradingの口座開設ボーナス13,000円は入金不要なので、前日高値の外に逆指値・レンジ反対側に損切り、という一連の手順を実際の注文画面で繰り返し練習できます。
参考文献
- 田向宏行『相場の壁とレンジで稼ぐFX〔改訂版〕』(自由国民社)
