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10万円が80万円になり、その45分後に0円になった日の記録です。
そして、それでもまだ相場の前に座っている理由の話でもあります。
ゲームに飽きた、という話をときどき聞きます。腕は落ちていないし、勝ててもいる。ただ、勝っても前ほど嬉しくない。理由を尋ねると、だいたい同じ答えが返ってきます。負けても、何も失わないから。
もし心当たりがあるなら、この先は少し役に立つかもしれません。ここは、負けたらちゃんと失う場所です。
プレイヤーの諸君、ようこそFXの世界へ。
私はこの世界の運営責任者ではない。
この世界に、運営責任者は存在しない。
誰も諸君を招いてはいないし、誰も諸君を待ってはいない。それでも諸君は、いずれ自分の意思でここに来る。
以下、この世界の仕様を説明する。
その前に、ひとつだけ。
これはゲームであっても、遊びではない。
「出金ボタンは実装されている」
諸君はすでに気づいていると思うが、この世界には出金ボタンが実装されている。
いつでも押せる。手数料も安い。誰も止めない。
だが諸君は、それを押さない。
これは不具合ではない。繰り返す、これは不具合ではない。
本来の仕様である。
10万円で始めた口座が、807,989円になった日があります。8倍です。
そのとき私が何をしたかというと、何もしていません。
押しませんでした。いま思い出そうとしても、押さなかった理由が出てきません。「まだ上がると思った」ですらない。押すという選択肢が、頭に無かったのです。
あとから気づいたのですが、このゲームには第百層がありません。最終ボスもエンディングもスタッフロールも無い。だから「ここで終わり」を誰も教えてくれない。10万円が80万円になっても、おめでとうの表示は出ません。数字が80万円になっているだけです。
「いくらになったら降りますか」と聞かれて即答できる人を、私はまだ見たことがありません。ちなみに、いくらを目指すとどれくらい届かないのかは、別途まじめに計算してあります(→ 20万円を2000万円にできるのか、確率で出してみた)。
「諸君が消えるのは、勝っている最中である」
諸君は、負けている最中に消えるのではない。
諸君が消えるのは、勝っている最中である。
油断でも慢心でもない。勝てば大きく張れる、というだけの算術だ。
その45分後、口座は0円になりました。
やったことを書きます。資金が8倍になっていたので、張れる金額も8倍になっていました。下落している最中に3ロットの買いを入れ、また3ロット入れ、また3ロット入れました。合計9ロット、約9,750万円分。実質120倍です。
あとで計算し直したのですが、私を殺したのはレバレッジの倍率ではなく、このロット数でした(→ レバレッジ1000倍は危ないのか ― 危ないのは倍率ではなくロットだった)。
維持率が削られていくのを見ていました。強制ロスカットが執行されました。終わりました。
ここからが本題です。
その1.3時間後、価格は私が買った値段まで戻ってきました。
耐えるのに必要だった資金は878,413円。口座にあったのは807,989円。足りなかったのは8.7%です。
読みは合っていました。方向も合っていました。合っていなかったのは残高だけです。
消えた807,989円は、画面の中の数字ではありません。これはゲームであっても、遊びではない。その意味を、45分で理解しました。
「体力ゲージは、減っては戻る」
諸君の体力は、画面に常時表示されている。
証拠金維持率という。
50%を切ると警告が飛び、20%で強制決済が執行される。
諸君がログアウトしていても、判定は続く。
ロスカットに至るまでの数十分が、どういう時間だったかを書いておきます。
80%。60%。警告メールが届く。48%。
――相場が少し戻って、71%。息をつく。
32%。21%。あと1%。
――また戻る。59%。手のひらが冷たくなっています。
そして数分後、また警告が鳴ります。
この間、私は一度もボタンを押していません。何もしていないのに、体力だけが削られたり戻ったりしている。
それで、生還したときの話なのですが。
ひとケタの維持率から戻ってきたときの安堵は、勝ったときの喜びよりはるかに大きいです。
これに気づいた時点で、たぶんもう手遅れでした。人は勝ったから戻ってくるのではありません。死にかけて生き延びた記憶があるから戻ってきます。
「入場料は、勝敗の前に徴収される」
諸君がボタンを押した瞬間、諸君はすでに負けている。
スプレッドと呼ばれるこの入場料は、勝敗の前に徴収される。
この世界は、腕の有無にかかわらず徴収する。
同じ日の話です。
その日、私は54回の売買をしました。反応速度を使い、画面に張りつき、4回に3回は勝ちました。相場から取れた金額は10万3,649円です。
手元に残ったのは、1,862円でした。
差額の10万1,787円は、売買のたびに引かれる手数料です。1回あたりは数百円で、気にする金額ではありません。それを54回やりました。
下手だったのではありません。ちょうど手数料と同じだけ上手かったのです。
このゲームは、そういう答えを平然と返してきます。勝率が高いのに増えないという現象は、EAでも同じ形で起きます(→ 勝率77%のEAが、なぜあなたの口座では機能しないのか)。
「それでも諸君は、また座る」
残高が0になっても、諸君のアバターは消滅しない。
脳も破壊されない。翌朝は普通に出勤できる。
消えるのは残高だけだ。
だから諸君は、何度でも戻ってくる。
それがこの世界の、最も優れた設計である。
ここまで読んで「二度とやらないほうがいい」と思われたかもしれません。
ですが、私はまた座っています。理由を正直に書きます。
6万4,000ドル。
そこに、私の玉があった。ハイレバレッジで買っていた。
相場は6週間、狭い部屋の中を行っては戻り、行っては戻りしていて、誰もが「またこれか」と思っていた。私もそう思っていた。
最初の一撃には、たいして意味を見出さなかった。
よくある跳ね返しだと思った。
――だが、戻ってこなかった。
6万5,000。6万7,000。
ティックが、上にしか跳ねない。
画面の右下で、青い数字が膨らんでいく。
桁が変わる。また変わる。
数秒前まで見ていた金額が、もう古い。
7万ドルを超えた。
何が起きているのかは、途中で分かった。
下を向いていたプレイヤーたちの玉が、順番に強制決済されていたのだ。
強制決済とは、買い戻しである。買い戻しは、価格を押し上げる。
押し上がった価格が、次のプレイヤーの限界を超える。そのプレイヤーも決済され、また買い戻しが起きる。
一撃が、次の一撃を呼ぶ。
その一撃が、さらに次を呼ぶ。
止まらない。誰にも止められない。相場を動かしているのが、もはや誰の意思でもなくなっているからだ。
価格は7万8,000ドルまで運ばれた。
6万4,000ドルから、1万4,000ドル。
ティックチャートには、その全部が刻まれている。
一本一本が独立した、連続する上昇の刻み。
これを、スターバーストストリームと呼ばずに何と呼べばいいのか。
そして私は、そのあいだ一度も画面から目を離していない。
※スターバーストストリーム(通称スタバ)=あるライトノベル作品に登場する、16連撃の高速連続攻撃。防御も回避もさせないまま押し切る技として知られています。もちろん相場にそんな名前の現象はありませんが、あの日のティックチャートを見た人は、たぶん同じ言葉を思い浮かべたはずです。
この間、私は一度も上手いことをしていません。買って、持っていただけです。
この上昇そのものを、段数と価格で追いかけた記事も別に書いています(→ 【BTC急騰】2万円を100万円にする具体的な手順)。
それでも、あの数時間は面白かった。
動いていたのが、誰かの用意した演出ではないからだと思います。世界中の人間が同時に判断を迫られ、耐えきれなくなった人から順に押し出されていく。その連鎖が、リアルタイムで目の前にありました。
あと、誰のせいにもできないのが良かった。運営もいない、味方もいない、抽選もありません。ボタンを押したのは自分だけです。
ついでに書いておくと、これは1万人が閉じ込められたあの世界でも同じでした。全員が最前線にいたわけではありません。料理を作り、釣りをして、店を開いていた人がたくさんいた。死ぬ可能性のある世界でも、人は普通に楽しみを見つけます。
私も、攻略組になるつもりはありません。
「救済措置が、ひとつだけ用意されている」
この世界には、救済措置がひとつだけ用意されている。
諸君の損失は、諸君が入れた金額を超えない。
ただしこの措置は全員に適用されるわけではない。
適用範囲は、諸君が座る席によって異なる。
ゼロカットのことです。急変でロスカットが間に合わず口座がマイナスまで落ちたとき、そのマイナス分を業者側が消してくれます。
国内のFX業者は制度上これができません。残高を超えた損失は追加入金の請求(追証)として届きます。ゲームで負けたのに、運営から請求書が来るわけです。私が海外の業者を使っている理由は、レバレッジでもボーナスでもなく、ここです。
0円になった日も、請求は来ませんでした。参加費は10万円で確定していました。
ただし中身は業者ごと、同じ業者でも口座タイプごとに違います。実際に複数社へ聞いたところ、返ってきた答えは1種類ではありませんでした。開設前にサポートへこの4点だけ聞いてください。1往復で済みます。
- その口座タイプはゼロカットの対象か
- 損失の上限はその口座だけか、それとも同じ名義の他の口座も含むのか
- 他の口座に残っているボーナスも、穴埋めに使われるのか
- どんな場合に追加請求があり得るのか
2番が「名義単位」だと、ひとつの口座での事故が別の口座の資金にまで届きます。その場合は、勝負する口座以外の残高を空にしておいてください。
「会場は、ひとつではない」
この世界には、複数の会場が存在する。
入場料も、強制決済の水準も、会場ごとに異なる。
諸君は、座る席を選ぶことができる。
それは、この世界で諸君に許されている数少ない選択のひとつだ。
ここまでの記録は、すべてビットコインを対象にした口座のものです。使っていたのはExnessで、ビットコインを触るならここを勧めます。
理由は入場料です。
通貨ペアの場合、入場料はだいたい6秒間の値動きの7倍あります。6秒で決着をつけようとするなら、めったに起きない大きな一撃を毎回引き当てないと、入場料すら回収できません。前半で「54回売買して1,862円」になったのは、これが理由です。
ビットコインでは、入場料は1分間の値動きの0.4倍でした。桁が2つ違います。
相場を読む力がどうという話ではなく、短期で殴り合うなら、こちらのほうが原理的に成立しやすいというだけの話です。私が触っている範囲では、この差がいちばん大きく効いています。
入出金の速さもここを使い続けている理由のひとつです。クレジットカードなら数秒、銀行振込でも数分で反映され、出金は24時間以内・手数料無料でした(→ Exnessの評判・安全性・入出金の実測)。
もうひとつ、強制決済の水準の話があります。
これは会場ごとに違います。この記録の口座は0円まで走りました。20%で止まる会場なら、同じ事故でも少しは残ります。
最初は、0円まで走るほうが不利だと思っていました。いまは逆に評価しています。
Exnessには資金管理口座があります。資金はまずそこにプールしておいて、取引口座には「全損していい額」だけを分けて入れるという使い方ができます。
こうすると、その取引口座で起こりうる最悪が入れた額ちょうどになります。0円まで走る仕様なので、途中で中途半端に残りません。1口座=1回の挑戦、参加費は入金額、以上。計算することが何も無くなります。
さきほど「このゲームであらかじめ確定できる唯一の数字は参加費の上限だ」と書きました。この使い方は、それを口座の構造そのものでやっているだけです。降りる条件を紙に書くかわりに、入金額で書いていると言ってもいい。
10万円が0円になった日も、失ったのは10万円でした。残高が中途半端に残って「もう一回いけるのでは」と考える余地が、そもそもありません。この世界で止められなくなる入口は、たいていそこです。
いっぽう通貨ペアを触るなら、日本語の情報がいちばん揃っていて口座開設ボーナスもあるXMTradingのほうが入りやすいと思います(→ XMTradingの評判・安全性)。私は通貨ペアはXM、ビットコインはExnessで分けています。
「圏内で練習してから、圏外に出ろ」
この世界には、ダメージの通らない領域が存在する。
デモ口座という。
本番と同じ画面、同じ値動き、同じ約定。失うものだけが無い。
諸君はそこで、一度死んでおくべきである。
デモ口座は無料で、期間の制限もありません。維持率が削られていく画面も、赤が青に変わる瞬間も、そのまま体験できます。
ここで一度、意図的に破産してみてください。どのロット数だと何分で死ぬのかは、圏内でしか安全に測れません。807,989円が0円になった日、私はそれを測っていませんでした。
順番としては、こうです。
- 口座を開設する(無料・本人確認あり・入金は不要)
- デモで、まず1回死んでおく
- 入金額は「無くなっても生活が変わらない額」ちょうど。これが参加費です
- いくらになったら出金するか、いくら減ったら閉じるか。この2行を紙に書いてから座る
4番は、このゲームに実装されていない機能を自分で持ち込む作業です。80万円のとき私が押せなかったのは、これを書いていなかったからです。
XMTradingで無料口座開設(デモ口座も同時に作れます)
最終アナウンス
最後に、諸君のアイテムストレージへ贈り物をひとつ追加しておいた。
確認してほしい。
取引履歴だ。
記憶の中の諸君は、青い数字が膨らんでいった数時間だけを覚えている。
履歴は、そうではない。
勝率、1回あたりの損益、支払った手数料の合計、そしてボタンを押した回数。
この四つを数え終えたとき、諸君は初めて、自分が何をしていたのかを知る。
数えたうえで、それでも座るのなら止めはしない。
これは諸君にとっての新しい世界であり、そして現実だ。
以上をもって、チュートリアルを終了する。
プレイヤーの諸君の健闘を祈る。
私の記録は以上です。
8倍になって、45分後に0円になって、1.3時間後に価格が戻ってきました。54回勝負して勝率74%で、手元に1,862円残りました。そして何もしていない玉が、勝手に1万4,000ドル分ふくらむのを見ていました。
降りるボタンは機能しません。勝っている最中に死にます。それでも、あの数時間より面白いものを私はまだ知りません。
最初に書いたとおりです。
これはゲームであっても、遊びではありません。
ですが、これほど面白いゲームも、他にありません。
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